「愛をください 其の壱」
◆春夏秋冬 様
その日HONKY TONKは史上最悪の客に見舞われた。いつも客がいないだけ
に、波児の心境は複雑だ。
さて、なぜこのような現象が起きているのかというと、原因はこいつだ、こいつ。
元雷帝、VOLTSのリーダー天野銀次。
本人は無類の女好きなのにもてるのは同性からがほとんどだ。
銀次を囲んでそれはそれは恐ろしいメンツが顔を合わせていた。
GetBackers相棒の美堂蛮。
VOLTS(公式ファンクラブ、とも言う)四天王の一人花月。
同じく四天王、士度。
なんであなたがと思うが、赤屍。
そして、いつになく怖い顔をしているウェイトレスの夏実。
本気で溜息をつく波児に気づく者はここにはいなかった。
「テェメェらなぁ、こいつは俺の(ここだけ強調)相棒なんだよ。わかってんのか?」
と、蛮が口を開けば
「だからなんです?銀次さんは銀次さんでしょ。僕と食事に行こうが勝手じゃないですか」
花月が冷静に言ってのけ
「だから、なんでお前となんだよ。」
士度がつっこみ
「そうですよ。だから今日は私と行きましょうね?」
さりげなく食事に誘う赤屍。
「銀ちゃんはわたしと映画に行くんですー」
ジャッカルに逆らうとは・・・夏実恐るべし
五人の目が合い恐ろしい沈黙が降りてきた。
これにはまいったモノで、中心にいる銀次はすでに半泣き状態だった。
「波児〜助けてよぉ」
ついっと波児は目をそらす。
「波児ーっ!!」
「あぁっ!!うるせぇ!!
銀次っテメェでなんとかしやがれ」
「そぉんなぁ」
なんて突き放したとき、今までの鬱憤を大声に乗せて発散できたのか、波児の脳裏にふと
妙案が浮かんだ。
「・・・・・そぉだ。
おい銀次、一時的に助けてやろう」
「マジ?」
「おぉ、ちょっくらこっちこいよ」
そろりそろりとカウンターまで移動する銀次。それに気付かないほど5人はにらみ合っていた。
「波児さーん?」
「はーい?」
「なぁんで俺こんな格好してんでしょうか?」
もっともな銀次の問いに、波児は渋く笑うと
「気にすんな」
「イヤ、そんなこと言われても!!」
「うっせぇーなぁ。景品なんだからしゃーねぇーだろ」
「景品?」
首を傾げる銀次。彼の首にはラッピング用のピンクと白のリボンがされていた。それ
はまさに人間景品。
銀次を無視し波児は店内のカラオケ用マイクで、今だ静かに殺気だけをまき散らしに
らみ合っている5人に声をかけた。
『只今より、天野銀次争奪戦を開始しまーす。
優勝者には天野銀次1年分でーす』
もの凄い勢いで波児の方を振り返る一同。
首にリボンをされて今までよりも可愛くなっている銀次が目に入った瞬間、誰より速
く蛮が声をあげた。
「な!?おい銀次!!何をそんな格好してんだよ!(するなら俺の前だけにしてくれ!!)
波児!銀次争奪戦って!?」
「銀次さんリボンにあいますよ〜。(銀次さん1年分ってどういう意味出だろ・・
・)」
花月に褒められてちょっと複雑だが、嬉しそうな顔をする銀次。夏実も可愛い可愛い
と駈け寄った。
「おい、よろず屋。どういうことだよ。(くっ、銀次可愛すぎだ・・・)」
『はいはい。お前たちがいつまでも睨み合ってるとこっちも商売あがったりなんでね。
だから、誰が銀次貰うかで揉めてんなら、ちょっとばっかし手伝ってやろっかなー・・・なんて』
「馬鹿野郎!!余計なことすんなよなぁ?」
「いいじゃないですか。美堂くん。(銀次君を1年間好きにできる・・・クックックッ)
それとも、勝ち残る自信がないのですか?パートナーなのに」
「くっ・・・赤屍ぇ」
「僕は出ますよ!!銀次さんと幸せになれるのならこんな馬鹿らしい舞台にだって出ます」
ぎゅっと銀次の手を握り、その目をしっかとみつめてそう言った。
『はーい。絃の花月出場ー』
その手を引き離して夏実は銀次に抱きつく。まさかここまでして貰えるとは思わなかっただけに、
びっくりする銀次だったがすぐに幸せそうにほえほえ笑う。夏実も嬉しそうに笑って、
「あたしも、銀ちゃんのために出場するよ?」
「わ〜い(^o^)夏実ちゃん出るの〜?嬉しいなぁ〜」
『はい。夏実ちゃん出場ねぇー』
つかつかと幸せな銀次に歩み寄り、
「あ、蛮ちゃん」
「おりゃっ」
グウで思いっきり殴ってから波児に向き直ると、
「波児。俺も出るぜ」
「蛮も出場」
「っく・・・こんな変態どもに銀次渡してたまるかよ!!おい!よろず屋!俺も出るぜ!」
『ビーストマスター士度出場』
「ホントにその通りですね。私も出ます」
「いや、あの、あなたが1番そうなんじゃ・・・」
『Dr.ジャッカル出場。と言うわけで、天野銀次争奪戦。以上の5名で戦ってもらいましょー!!』
「・・・ところで俺の意志は・・・?」
銀次の声が虚しく店内に消えていった。
「次回争奪戦会場にて争奪開始!!チャンネルはそのまま!!
司会は私、王 波児。解説はMAKUBX。ゲスト兼景品に天野銀次でお送りする予定です。
それでは!」
|