『すべてへ』
                                      
◆春夏秋冬 様

そのつながりは曖昧な いくつかの言葉でも
「ゴミだ・・・」って呼ばれても ぼくたちを 強くする


「腹減った〜」
 俺がぼやくと、蛮ちゃんはやっぱり遠い目をして言った。
「水があんだろ、水が・・・」
 ここしばらく水しか飲んでいない気がする・・・
「ねえねえ、やっぱり波児んとこ行こうよぉ!このままじゃ飢え死にするって・・
・」
「うるせえ!!意地張っちまったんだからもう奴の店には行けねえと思え!!」
「そんな、それは蛮ちゃんの理由でしょ?」
 蛮ちゃんは急にむすっとなると、
「寝る!!」
 座席を倒して俺に背を向けてふて寝をしてきた。
 蛮ちゃんいつも俺のことガキガキって言ってるけど、これじゃそっちの方がガキだ
よ。
 俺は蛮ちゃんの肩をゆさゆさと揺する。
「蛮ちゃ〜ん。ねぇ蛮ちゃ〜ん」
 シカトされた。軽く溜息をつくと俺も座席を倒して横になる。
 目が覚めたら美味しいモノがありますようにと願ってから目を閉じた。


 多分これは夢なのだろう。
 俺は雷帝だった。懐かしいちゃ懐かしいけど・・・ちょっとイヤ。
 ローアタウンを歩く俺の後ろ、士度とカヅッちゃん後マクベス・・・
 多分この方向はサウスブロックにむかっているんじゃないかと思う・・・ああ、こ
れはきっと牧師と初めて会ったとき・・・
 
ーーーーあなたが雷帝?

 その一言をきっかけにパズルのように夢がバラバラに組み立っていく。

ーーーーなぜ怖がらない?
ーーーーもっと外を見てくると良い・・・
ーーーー変な奴だ
ーーーー大っ嫌いですよ
ーーーー俺はここにいるんだ。それが俺の存在理由・・・
ーーーー思い出を懐かしむのと囚われることはあまりに似ていてとても違いすぎる・
・・

 すべてが組み立て終わると忘れられない光景が飛び込んできた・・・ビルの屋上に
立つ牧師、止めようと走る俺。夢の俺と一緒に俺も走る!
 この後を知っているけど走らずにはいられない。
 牧師は俺に笑うと

ーーーー風はどっから吹いてくる?

 空中に身を躍らす牧師。間に合いはしない。俺は下を見た。真っ赤な液体がぶちま
けられていた。即死だ。助からない。
 泣きはしなかったが、不思議と脱力感というモノに襲われた。
 
ーーーー風はどっから吹いてくる?

 解らないよ。
 俺はココにいても良いのかすらわかんなくなってきたよ・・・・あんたはどうして
もらいたいんだろう
 ねぇ、誰か答えてよ。
 ぐにゃりと空間がよじれる。ああ、場面が変わる。
 
ーーーーは〜あ〜いvGBのお二人さん。

 ヘブンさん。お金のことにはうるさいけど良い人だよね〜。美人だしナイスバ
ディーだし・・・
 けどこの人おかげで何度死にかけたコトやら・・・

ーーーーまあまあでしたよ、君は
 
 これは赤屍。嫌いだけどまあ、死ぬ程っという訳じゃないかな?ご飯とかごちそう
してくれるし・・・
 さらに展開していく夢。波児が出てきたと思えば夏実ちゃん。カヅッちゃんが笑う
と、士度が蛮ちゃんと睨み合ってたり。マドカちゃんのバイオリンの音色、綺麗だっ
たな〜・・・マクベス・・・うわ、なんだろ今日の夢みんな勢揃いで・・・

ーーーー風はどっから吹いてくる?

 あ、またあの声。ふっと周りのみんなが消えていく・・・俺はまた一人ぼっち・・
・存在してちゃいけないのけなぁ・・・?

ーーーー俺の相棒だろ?

 蛮ちゃんの声。まだ少年の域を抜けきっていない生意気そうな声。俺はこの声結構
好きだったりする。
 蛮ちゃん蛮ちゃん蛮ちゃん・・・早く出てきてよ、俺ココにいていいのか聞きたい
んだ。ねぇ蛮ちゃん。

ーーーー嫌ッつっても一緒に引きずってってやらぁ!

 本当にいいの?
「・・・ばーか。俺ら無敵のGetBackersだぞ?」
「あ、蛮ちゃん・・・・?」
 
ーーーー風は・・・・

 風はみんなの方から吹いてくるよ・・・大丈夫だよ牧師・・・・もう逝っていいよ

 
 ここで俺は目を醒ました。何故だか蛮ちゃんに肩を支えられ担がれていた。
「ふぁに、蛮ちゃん?」
「おう。ようやく目えさましやがッたな?」
 目の前にはHONKY TONK・・・?
「あれ、蛮ちゃん一生来ないんじゃ?」
 蛮ちゃんはニッと笑うと顎を癪って中に入れと促した。
 わけが分からず俺はドアを開けた。
 とたん鳴り響く炸裂音!!
 びっくりする俺に向かって夏実ちゃんがにっこり笑って言った。
「お誕生日おめでとう!銀ちゃん!!」
 あ、そうか今日は・・・
「おめでとうな」
 波児に続き、
「おめでとうございます。銀次さん」
 カヅッちゃん、
「良かったな銀次」
 士度。流石に考慮したのか赤屍は呼ばなかったようだ。後々なんか言われそうだけ
ど・・・
 最後に後から入ってきた蛮ちゃんが、
「HappyBirthday銀次」
 にやりと笑ってそう言った。
 どうやら嵌められた様だけど、今はそんなのどうでもいいよね!!
「ありがとう!みんな!!」
 牧師?風は吹いてるよ?みんなの方から・・・みんなと歩く未来から!


                             〈END〉